ルーミア可愛いよルーミア

あれ、俺、なで、こんな時間、起き。
 ねむ い。

かゆい
うま


ぼんやりと意識が覚醒する。
体内時計が朝を知らせて、霖之助の体を起床させた。

「う、ん? 真っ暗?」

しかし、何度目をしばたかせても自分の周囲はまだ濃い闇が覆っていた。
はて、変な時間に目が覚めてしまったのだろうか。
霖之助は首を捻りつつ、もう一度布団の中でもぞもぞと位置を正す。

「…うー」

すると、布団の中で動く何かが眠たそうに声を漏らした。

「……」

霖之助はむんず、とそれを引きずり出す。
布団から顔を出したのはルーミアだった。

「ぐー」

霖之助は無言でそれを窓から外へ放りだした。





ルーミアが香霖堂に居ついて早数日が経っていた。
今では週に一度くらいのペースで店の中が、ルーミアを初めとしたチルノや大妖精達ちびっ子の遊び場と化すありさまだった。
霖之助は「まだおいしくならないのー?」とまとわりついてくるルーミアや、おもちゃにされて壊れた商品に涙を流したりしていた。

「んー…♪」

あぐらをかいて本を読む霖之助の中。
そこにすっぽりと収まって本を読むのがルーミアの一日の大体だった。
霖之助自体は非常に本が読み辛い。

「……じゅる」

怪しげな音が聞こえた。
霖之助がちらりと視線を下に下げると涎を垂らしたルーミアがいた。
どう見ても、「今日のおかず100選」などという外の本が原因らしい。
彼女が開いているページにはたっぷりと黄金色の甘い蜜がかかったみたらし団子が乗っている。
果たしてみたらし団子はおかずになりえるのか、と霖之助は疑問に思った。

「ねぇねぇ、霖之助。霖之助も垂れをかけたりしたら甘くて美味しいかな?」

真っ赤な瞳は本気だった。
本気と書いてマジと読むくらいに。

「さぁ、どうだろうね。でもこの間、ごはんにジャムをかけて食べたら美味しくなかったみたいになってしまったらどうする? 僕は一人しかいないんだからジャムご飯の時みたく新しく茶碗にご飯をよそったりはできないんだよ? それにやはり食べ物は自然のままが一番だという言葉があるとおりに無駄な調味料なんかは一切つけずにした方がいいんじゃないかな。つまりは僕は垂れをかけても食べれないんだよ」
「そーなのかー」

ジャムご飯は危なかった。
ちなみに紅魔館のメイド長が「ラズベリーで作ってみましたの。良かったらお一つどうぞ」と言って持ってきてくれた真っ赤なやつを使った。
確かに甘くて美味しいのだが、たまに少し鉄のような味がするジャムだった。
ちなみにルーミアは大変気に入ってパンには必ず塗って食べていた。
パンがなくなったので代わりにご飯にかけて食べようとしたルーミアだったが、ジャムご飯には和洋折衷という言葉は通用せず、ギブアップしたのだ。
霖之助は思い出しただけでも胸焼けがしそうだった。

「……ねぇ、霖之助は私が食べるんだから、他の人に食べられたら駄目だよ?」
「ああ、そうだね。気をつけるよ」

願わくは誰にも食べられたくないのが本音ではある。
ルーミアは霖之助の返事に安心したのか視線を再び手元の本に戻した。

「……じゅる」

涎も元通りだ。
霖之助は何故か少し背筋が寒くなった気がしてぶるりと体を振るわせた。

「地鶏なのかー」

ルーミアは今度は串に刺さった鶏肉が何本も美味しそうに焼かれているページを見ていた。
もしかしたら彼女の頭の中で霖之助は串に刺さって炭火でじっくりと焼かれているのかもしれない。

「……今日は八目鰻の屋台にでも食べに行くとしようか?」

霖之助は現在の有り金と自分の命を天秤に掛けた結果、そう言った。

「わぁ! ほんとう? やったー!」

するとルーミアは霖之助の膝の上で笑顔を咲かせる。
ただ口元の涎が飛びそうなのはいただけない。

「……少しは加減してもらえると嬉しいんだが」

でもきっと無理だろうな、と霖之助は思った。
それから「ああ、自分もこの子にだいぶ慣れてきてしまったのだな」と苦笑した。
とりあえず、彼はあぐらの上にすっぽりと収まって無邪気に喜んでいるルーミアの頭を撫でてやることにした。

「〜♪」

そして、頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細める少女が自分の明日を握っているのだと考えると、霖之助は夕日を一人で眺めたい気分になるのだった。



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