HOME>霖之助、○○へシリーズ

『霖之助、マヨヒガへ』

この話は『霖之助、永遠亭へ』の続きにあたります。
前作を読んでからのほうが面白みが増すこと請け合いですぜ、げへへ。


スキマを抜けるとそこはマヨヒガだった。
森近霖之助はマヨヒガの床に顔から着地して、床に這い蹲りながら今年が厄年らしいことを確信した。

「……これが終わったら霊夢のところで厄除けの札をもらってこよう」

とにかく、こうして、飽きたら返してあげる、という紫の言葉だけを心の支えにして霖之助のマヨヒガ生活はスタートしたのだった。



明けて次の日。
霖之助は慣れない布団だったからか随分と朝早くに目が覚めてしまった。
紫は当然として、彼女の式や式の式ですらまだ眠っている。

「……昨日にあれだけ飲まされて二日酔いになってないのは奇跡だな」

何故か昨日はスキヤキで、酒が大盤振る舞いされた。
珍しく紫が酔って、何故か霖之助にしなだれかかってきたりして大変だった。
なるべくなら昨日のは早く忘れたい記憶だ。

「さて、どうしたものか」

寝直すのは時間がなんだかもったいない、しかし、読書をしようにも本がない。
ふむ、と数秒悩むと霖之助は手早く着替えを済ませると自分にあてがわれた部屋を出た。



紫の式である八雲藍の朝は早くもなければ遅くもない。
主である紫は昼過ぎあたりまで寝ているし、自分の式である橙よりも早く起きれば良いだけだからだ。
そんなわけでいつも通りの時間に起きて、いつも通り食事の準備に取り掛かろうと台所へと向かうと先客がいた。

「……店主?」
「ん?ああ、君か。ぼちぼち朝食ができる、食器でも並べてもらえるかい?」
「ああ、はい、わかりました。……い、いや、そもそもなぜあなたが朝食を?」
「うむ、実は少々早く起きてしまってね。……もしかして具合が悪かったかい?」
「い、いや、そんなことは……」

藍は突然の事態に少々慌てたがそこは大妖怪の式。
とりあえず、自分を落ち着かせると、今日は少し楽が出来たんだから良しとしよう、と気分を切り替えた。
そして、食器を並べることにする。

てきぱきと二人が準備をしたので朝食はいつもより少し早い時間に出来た。
朝食を囲うのは三人。霖之助、藍、橙だ。紫はやっぱり寝てるようだ。

「では、いただきます」
「いただきます」
「いただきまーす」

霖之助が音頭をとって食事が始まった。

「ほう、なかなか」
「おいしいー」
「どうも、ありがとう。気に入ってもらえてうれしいよ」

どうやら彼が作った食事はなかなか受けが良かったらしい。
ふと橙が自分の目玉焼きに掛けるのに醤油がどこにあるのか食卓を見回した。
そして、醤油が自分の手の届く範囲になかったのでこう言った。

「藍様、醤油をとってくださいー」
「ああ、わかった」
「いや、僕が取ろう」

醤油は橙からは遠く、藍と霖之助の間で、しかし霖之助寄りの位置にあった。
藍はそれを取るために手を伸ばす。
だが、霖之助が気を利かせて同じように手を伸ばす。

結果、醤油を取るために伸ばした二人の手が重なりあうこととなった。

ちなみに下が霖之助、上が藍の順番だ。

二人はぱっと醤油から手を離す。

「あ、す、すまない……」
「い、いや、こちらこそすまなかった……」
「?」

少し顔を赤くしてお互いがお互いをちらりちらりと窺う。
橙はそんな二人を見ながら「早く醤油とってくれないかな」と思っていた。
ちなみに紫は久々の悪夢にうなされていた。
内容は恋人を誰かに横取りされる夢だったとかなんとか。
真相は夢の中である。










その後。

なんとか無事に紫から解放された霖之助は真っ先に博麗神社へ向かった。
そして、ツケの一部の代わりに作ってもらった厄除けの札を香霖堂の入り口にすぐさま貼り付けた。
これで安心だ、と霖之助は勘定台に戻り本を読み出す。

だが、その平穏はものの数分で崩された。
なにやら息を切らせた霊夢が入ってきたのだ。

「霖之助さん!しばらく泊めてちょうだい!」
「……一体何があったんだい?」
「萃香にあげるお酒がもったいなくて水を混ぜて渡したら、そのことがバレてちょっとミッシンブパープルパワーで神社が……」

あまりの馬鹿さに霖之助が呆れていると再び店の扉が開いた。
次に入ってきたのは魔理沙だった。
何故か煤だらけで真っ黒だ。
霖之助は魔理沙の台詞が大体予想できてげんなりした。

「香霖、ちょっとばかり実験に失敗して、家が吹っ飛んじまったんだ。しばらくやっかいになるぜ!」
「……はぁ」

霖之助は大きくため息をついた。
だが、彼の不幸はとどまるところを知らない。

「ごめんください、店主はいるかしら?……あら、随分とお客がいるんですね」
「あ、霊夢!」
「咲夜にレミリア?」
「私たちもいるわよ」
「店主さん、お邪魔しますー…」
「あ、魔理沙だー!」
「げげ、パチュリーに中国、それにフラン!?」
「なんであんた達がここにいるのよ?」
「実は妹様がお暴れになって紅魔館が……」

咲夜が片手を頬に当てて申し訳なさそうにいう。
霖之助は頭を抱えたい気分だ。

「こんにちはー。霖之助さん、いるかしらー?……あら、随分な人ねぇ〜」
「……待ってください、幽々子様!って、ホントに人がたくさん」
「……幽々子に妖夢まで来たのかよ」
「実はかくかくしかじかで、しばらく白玉楼にいられなく……」

げんなりと魔理沙が呟き、妖夢が沈痛な顔で言う。
外泊先が香霖堂なのは恐らく幽々子の独断で、妖夢は最後まで反対していのだろう。
そして、霖之助はここまで来ると次の展開も読めてきていた。
果たして、彼の予想通り、再び来客が現れた。

「お邪魔します。……実は先日、輝夜様と妹紅とが戦った時に永遠亭が…」
「今度はこっちがお世話になりに来たのよ。さぁ、とにかく将棋でもしましょうか?」
「ふーん、ボロイ店だなー」
「こ、こら、てゐ!店主さんの前でそんなことを言っては……!」

そして、止めとばかりに、八雲一家がスキマからやってきた。

「こんにちはぁ。なんだか面白そうだから来てみたわ」
「……店主よ、すまなかった、紫様を止められなかった……」
「お邪魔しまーす」

わいわいがやがやとついに幻想郷でも名だたる面々が一箇所に集まった。
そして、店の主をそっちのけで彼女たちは部屋割に食事当番、その他たくさんを決めだした。
森近霖之助はその遠足気分な彼女達を見て。

「もう、好きにしてくれ……」

と、諦めて勘定台へと力なく倒れたのだった。


END


というわけで『霖之助、○○へ』シリーズは一応の完結を迎えることと相成りました。
ここまで長々とお付き合いいただいた方々、本当にありがとうございました。
なお、次回の気まぐれ連載は『霖之助、わらしべ物語』を予定しております。予定は未定ですが、できればまた応援の方をよろしくお願いします。
それでは、また。

この記事のトラックバックURL

http://asikiri.blog102.fc2.com/tb.php/85-1f3d90f0

コメント

コメントする

管理者にだけ表示を許可する

 

Template Designed by めもらんだむ RSS
special thanks: Sky RuinsDW99 : aqua_3cpl Customized Version】